脳・神経機能センターの診療について(松島俊夫センター長による神経血管圧迫症候群・もやもや病に対する治療

片側顔面けいれん

トップに戻る

 この病気は片側の下まぶたがピクピクとけいれんを起こすことから始まります。それで、最初に眼科を受診される方が多いのですが、実は脳の病気です。けいれんは数か月から数年かけて徐々に進行し、同側の口元までけいれんが起きるようになります。片側の眼瞼と口角が同時にけいれんするのが特徴です。そしてこのようなけいれんは一日に何回となく起こります。病気がさらに進行すると5~10数秒の間、片側の目と口元が持続的にひきつったままになります。しばらく片目が閉じてしまうので物が見えなくなり、運転しているときなどには危険すら伴います。特に精神的に緊張する時、例えば人前に出て話をしようとすると余計にピクピクとけいれんが起きます。そのために患者さんは人前に出るのが恥ずかしくなり、引っ込み思案になります。この病気のためうつになる人もおられる位です。また、この顔のけいれんと一緒に同じ側の耳の中でゴソゴソ、ガサガサと音がすることもあります。

 この病気は精神的なものではありません。頭の中で脳から顔の筋肉を動かす顔面神経が出ていますが、たまたまこの神経に動脈がぶつかり拍動すると、神経が異常に刺激され、その刺激がそのまま顔の筋肉に伝えられて筋肉が異常にけいれんを起こすようになります。中年以降に動脈硬化が進み、血管は硬くなり、かつ蛇行し、そばにあった顔面神経にぶつかるようになるのが原因と考えられます。ですからこの「片側顔面けいれん」は40歳以上の方に起こることが多い病気です。

 片側顔面けいれんは一切の薬が効きません。精神安定剤や降圧剤がわずかに症状を和らげることがある程度です。この病気を治すには手術による方法(神経血管減圧術)とボツリヌス毒素の注射による方法があります。ボツリヌス毒素の注射は約3か月間しか効果がなく、5~6回以上試みると顔の筋肉がいたみ、徐々に顔の麻痺が出現するので治療に限界があります。特に若い方には勧められません。

片側顔面けいれんの手術(神経血管減圧術)

 これは耳の後ろの頭蓋骨に人差し指の頭ほどの小さな穴を開け、ここから手術用顕微鏡を用いて脳幹の表面にある顔面神経を調べ、これにぶつかっている血管をわずかに移動させて神経の血管圧迫を解除する方法です。移動した血管は小さな綿や特別な糊で動かないように近くの脳や骨に固定します。脳を切ったりすることは一切ない手術です。この手術は「神経血管減圧術」と言われており、根本的な原因を取り除く最も理想的な治療方法です。約10~14日程の入院が必要です。慣れた外科医が行うと、効果は究めて良く、安全な手術です。けいれんは手術直後から全く消失する人(約70%位)と、2~3か月後に徐々に消失する人(約20~30%位)があります。ただし顔面神経は聴神経と一緒に走っているので、手術の際にこの聴神経を傷つけると片側の聴力が障害されることが昔は多々ありました。近年、技術の進歩により手術中に耳が聞こえているかどうかを連続的にモニターすることが出来るようになり聴神経傷害は著しく減少しました。最終的には手術を受けられた95%の患者さんが満足されます。ただし、どのような手術にも当てはまることですが、全身状態が悪い方や高齢者(75歳以上)には残念ながらお勧めできない方法です。

お問い合わせ:TEL:092-832-1100(代表) 受付時間:月~土曜 午前9時~午後5時