脳・神経機能センターの診療について(松島俊夫センター長による神経血管圧迫症候群・もやもや病に対する治療

脳の検査(健康診断)と無症候性(症状のない)脳疾患
(未破裂脳動脈瘤、脳血管狭窄と脳腫瘍)

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はじめに

 脳の画像診断は近年すさまじく進歩しました。特に磁場で検査する核磁気共鳴影像法(MRI&MRA)の出現で、頭蓋骨の内にあるもの、脳や血管が画像として簡単に見られるようになり、その結果まだ症状の出ていない脳疾患を持つ患者さんが多くみつかるようになりました。例えば、頭痛で受けたCT検査や健診で受けたMRI&MRAによる脳ドックで、未破裂脳動脈瘤や良性脳腫瘍である髄膜腫がみつかるわけです。自分では元気で健康だと信じていたのに、医師から病気が脳の中にあると指摘され、気の重い日々となります。知ると確かに悩みの種になりますが、知って上手に付き合うと、知らずに忍び寄る運命よりも元気に長生き出来るのも事実です。それで、脳の健康管理として脳ドックが普及しつつある現代、脳検査の利点と欠点について知って利用するのが得策だと思います。また、不幸にも(?)未破裂脳動脈瘤や無症候性脳血管狭窄や脳腫瘍がみつかったら、どう付き合うべきかについてご説明したいと思います。

脳の検査法と脳ドック

 現在、脳の検査には、脳波、CTスキャン、核磁気共鳴影像法(MRI&MRA)、脳血管撮影、脳循環検査(SPECT)などがあります。昔は、脳神経細胞が出す電気の波をみる脳波しかなく、脳疾患が疑われれば何でも脳波検査でした。しかし脳波でわかる病気は少なく、近年CTスキャンが出現してからは、容易に出来るCTスキャンが脳の検査として頻繁に用いられるようになりました。CTスキャンは、コンピューターで頭蓋内を輪切りにして観察するもので、頭痛などの最初の検査としては便利です。出血(血液)は白く描出されます。しかし、血管が閉塞する虚血性病変などは見えにくく、脳動脈瘤は造影剤を注入する造影撮影なしでは見えないという欠点があります。それに比べMRI&MRAは、血管性病変を含め病気が症状を出す前から脳の小さな病気を捕らえることができます。血管描出に造影撮影もいりませんし、外来でできます。

1.無症候性脳血管狭窄(写真1,2)
 脳の血管の病気には大別すると、脳の血管が詰まる場合(虚血性)と血管が切れる場合(出血性)があります。血管が詰まって生じる脳梗塞は脳卒中全体の約7割と発症率が大変高く、また手足の麻痺などの後遺症を残すので、恐れられています。重症なときは、命さえ奪います。脳梗塞とは脳に血液がいかなくなり細胞が死んでしまった状態で、その原因には血管に血の固まり(血栓)が詰まって起こる脳塞栓(のうそくせん)と、血管の壁にあぶらがたまるような変化(動脈硬化)が起こって血管が狭くなる脳血栓(のうけっせん)があります。最近日本人も食事が西欧化され、頚部の太い血管(内頚動脈)にアテローム(お粥の固まりのようなもの)が形成され、血管が細くなったところに血栓が出来てしまう内頚動脈狭窄症が増えています。脳梗塞になってしまうと治りませんので、40歳を過ぎたら2~3年に1回の頻度で脳血管の様子をMRAで検査して行くのが得策です。梗塞になる前の虚血(血液が不足しているだけで脳はまだ生きている)の時期に脳への血流を再開することを目的とした外科治療を行うことができます。

【写真1:MRI-脳梗塞】

【写真2:頚部MRA-内頚動脈狭窄症】
2.未破裂脳動脈瘤(写真3)
 無症候性でみつかる脳血管のもう一つの病気は、血管のこぶである脳動脈瘤です。動脈瘤があっても無症状で長い間元気に過ごされる方もおられますが、動脈瘤が破れると大変恐れられているくも膜下出血を起こし、3人に1人は死亡か重篤な後遺症を残します。そのため、破れる前に診断し、治療を考える必要があるわけです。しかし、全員がすぐに破れるわけではなく、動脈瘤の大きさや出来た場所・形によって破裂する可能性は異なります。また外科治療も100%安全でないので、無症状の段階で予防的な治療が必要なのか、どのような治療法が良いのかを慎重に検討する必要があります。まずみつかった動脈瘤がどの程度破れやすいのかを更に精密検査し、その後動脈瘤が大きくならないように血圧のコントロールをしながら、動脈瘤の大きくなるスピードをMRAなどで見ていくわけです。外科治療が必要な動脈瘤は、1.大きな動脈瘤、2. 瘤の形がデコボコしている動脈瘤、3.経過中に大きくなってくる動脈瘤、4.患者さんが若い人などです。また、外科的治療法にも開頭手術下に動脈瘤の頚部をクリップで挟むやり方と、開頭せずに血管内手術でカテーテルを用いて瘤内をコイルで詰めるやり方もあります。専門の医師に納得いくまで説明を受けられることが大切です。私達は、破裂の可能性のある動脈瘤で外科治療が安全にできるものは積極的に治療を行い、合併症を生じやすい場所の動脈瘤は出来る限り血圧コントロールで保存的に治療していくことにしております。

【写真3:MRA-脳動脈瘤】
3.無症候性脳腫瘍、特に髄膜腫(写真4)
 脳腫瘍にも無症候性のものが多数あります。中年女性によくみつかる良性脳腫瘍に、脳を包む膜から発生する髄膜腫があります。大きくなるまでは症状が出ることが少ない腫瘍です。手足が麻痺してきたとか目が見えにくいとかの症状が出る頃には、手術で摘出するのに大変苦労する位大きくなっています。良性腫瘍ですが大きくなり脳の血管を巻き込むと、手術で全部は取れなくなります。したがって、髄膜腫などの良性腫瘍も無症候性の小さい段階でみつけ、手術が簡単で安全なうちに完全に取り去る方がよいと考えます。但し、ゆっくり発育するのも事実なので、私達は、患者さんの年齢(余命)と腫瘍が発生した場所やその大きさで手術の時期を判断しています。

【写真4:MRI-髄膜腫】

以上、現代における脳の健康管理と無症候性脳疾患について説明致しました。この紙面では十分に言い尽せないこともありますので、ご質問のある方はお気軽にご相談下さい。

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