脳・神経機能センターの診療について(松島俊夫センター長による神経血管圧迫症候群・もやもや病に対する治療

未破裂動脈瘤

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脳動脈瘤について

 脳動脈瘤とは脳血管の一部が風船のように膨らんだ状態で、いわば血管にできたコブです。脳動脈瘤ができやすい家系があることや高血圧・動脈硬化などとの関連が示唆されていますが、多くは原因不明です。

 1~5%の人には破裂していない状態の、いわゆる未破裂脳動脈瘤があると言われています。この中には周囲の神経や脳を圧迫することで物が二重に見えたり手足が動きにくくなるなどのさまざまな神経症状を起こす症候性のものもありますが、大半は高血圧・糖尿病などの初期と同じように何ら症状がありません。無症候性の場合には、(原因が他にある)慢性頭痛などの検査でMRIやMRアンギオグラフィー等を行った際に偶然見つかります。なお、症候性脳動脈瘤がある場合には何らかの治療が必要とされますので、早急に脳神経外科を受診してください。

 症状が無く、日常生活に何の差し支えも無いのにわざわざ治療しようなどという方は中々いないと思います。しかし、風船に例えられるが如く、脳動脈瘤は破裂することがあります。脳動脈瘤が破裂した場合のほとんどは脳の表面にあるくも膜下腔という場所へ出血、いわゆるくも膜下出血を起こします。くも膜下出血という言葉を耳にしたことがある方は、その怖さも御存知かもしれません。今まで経験したことが無いようなとか、バットで殴られたような等と形容される激しい頭痛と悪心が起こり、ひどい方では数分~数十分以内に意識も悪くなりこん睡状態となります。1/3から1/4の方は死に至ると言われています。ついさっきまで目の前で元気だった人が突然命を落とすことがある、それがくも膜下出血という病気なのです。幸いにも軽症で済んだ場合でも安心はできません。破裂した脳動脈瘤に対して治療を行わない限り、再び破裂して出血する可能性が高いため(半年以内に約60%が再破裂すると言われています)、緊急に手術を行うことが必要になります。言うまでも無く、このような急病というものはどんなものでも本人や家族をはじめとするまわりの方々への心身の負担となってしまいます。

 しかし、未破裂脳動脈瘤全てが必ず将来的には破裂する、というものではありません。では、どのくらい破裂の可能性があるのか。これは未だに正確な予測をすることが困難なのです。今までに多数の脳動脈瘤に関する臨床研究が行われており、大まかには一年間に破裂する可能性(年間破裂率)は1~2%前後と考えられてきました。2001年から日本脳神経外科学会が中心となって行われた大規模追跡調査の結果では日本人における未破裂脳動脈瘤の年間破裂率は0.69%と発表されています(中間報告)。しかし、動脈瘤の大きさや動脈瘤がある場所などによりこれらの数字は大きく変わるものであることもわかってきており、個々の動脈瘤について詳細な検討が不可欠となります。

 現在では、造影剤を使用せずに行えるMRアンギオグラフィー、より精密な検査として造影剤を静脈から注射して行うCTアンギオグラフィーなどで動脈瘤の検査ができるようになり、脳血管造影検査も以前のような苦痛が大きい検査ではなくなってきました。特に当院では高磁場(3テスラ)MRI装置や多並列検出器(マルチスライス)CTを用いた精度の高い検査を行っており、これらの検査で動脈瘤の大きさや形を詳細に検索して破れやすさを検討しています。一般に3mm以下の動脈瘤は治療の対象とはなりませんが、3mm以上になると主治医の先生とよく相談される必要があります。

脳動脈瘤の治療について

 現在、標準的な脳動脈瘤の治療としては開頭によるクリッピング術とカテーテルという細い管を用いた脳血管内手術(コイリング)が行われており、さらにこれらの組み合わせや血管のバイパスを併用して行う場合などもあります。

 開頭クリッピング術は動脈瘤の外側から根っこの部分をクリップで挟みこみ、動脈瘤内に血液が入ってこないようにして破裂を予防する方法です。脳血管内手術は足の付け根から入れたカテーテルを動脈瘤内まで誘導し、金属コイルを動脈瘤の中に詰め込むことにより動脈瘤内に血液が入ってこないようにして破裂を予防する方法です。開頭クリッピング術の利点は、直接見ながらクリップをかけるため確実性が高いこと、治療を行った後の長期にわたる効果が実証されていることです。欠点は頭の傷が大きいことです。脳血管内手術の利点は、頭を切らずに治療できることです。また、開頭クリッピング術より体に対する負担が小さいため、高齢者の動脈瘤治療にも適しています。比較的新しい治療法であるため長期的な効果はわかっていないという欠点がありますが、未破裂脳動脈瘤の治療というものは予防的に行われるものであるため、大きな傷を残さない脳血管内手術が欧米では未破裂脳動脈瘤治療の主役となっています。

 いずれの治療法が適しているのかは動脈瘤の大きさや動脈瘤がある場所などにより異なるため、専門的な検討が必要です。

脳動脈瘤に対する血管内手術施行例

脳動脈瘤に対するクリッピング術施行例

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