脳・神経機能センターの診療について(松島俊夫センター長による神経血管圧迫症候群・もやもや病に対する治療

もやもや病…もやもや病とは

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1.もやもや病とは?

 脳に酸素や栄養を運ぶ、とても大事な動脈の内頚動脈は、心臓から首を通って頭の中に入ってきます。頭の中に入ってくると、脳の前から上の方に向かう動脈 「前大脳動脈」 と脳の横側に向かう動脈 「中大脳動脈」 に分かれます。その分かれ目を内頚動脈終末部といいます。ほぼ目の後ろに存在します。

 もやもや病では、この部分が徐々に狭くなり、詰まってしまいます。

 動脈が狭くなってしまうため、脳血流が減少し、脳には酸素や栄養が足りなくなってしまいます。それを補うために、新しく細い血管がたくさんできてきます。これらが脳血管撮影検査でタバコの煙のようにもやもやと見えるので、もやもや血管と呼ばれます。これが、もやもや病と命名された由来です。

 もやもや病では、脳血管の閉塞がゆっくりですが進行し、必ず左右両方の脳血管が狭くなってきます。

 原因はいまだに不明です。

 日本人に多く発症することがわかっており、家族内発生率も高い病気です。

 女性に多く、発症は小児期(10歳以下)と30歳台に多くみられます。

 発症の仕方や症状によっていくつかの病型に分けられ、一過性脱力発作型、脳梗塞型、てんかん型、脳出血型などがあります。

 子供さんの場合は、圧倒的に多くの方が、一過性脱力発作や脳梗塞などの脳への血流が不足する脳虚血で発症し、成人で発症した方の半数は脳出血型です。

【正常の椎骨動脈造影(左)ともやもや病の椎骨動脈造影(右)】

 もやもや病の症状は呼吸と強く結びついて出現します。

 私たちの脳は酸素を必要としています。しかし、脳血管の拡張や収縮をコントロールしているのは、実は酸素ではなく、二酸化炭素なのです。

 通常、血液中の酸素が少なくなるときは呼吸困難な状況であると考えられます。すると二酸化炭素は増えるわけです。そこで、脳へ酸素を送らなければならないと体は判断して、脳血管を広げます。この脳の血管を拡張させる引き金となっているのは、血液中の二酸化炭素の増加にあります。では、それと逆の場合を考えてみると、泣いたり、笛を吹いたりして過呼吸の状態になると、血液中の酸素は増えるのですが、二酸化炭素は減ってしまいます。すると、体は酸素がたくさんある状態だと判断して、脳血管を収縮させて血流を少なくしてしまいます。もやもや病の患者さんは普段から脳血流が低下しているのに、血管がさらに収縮して血流が減ってしまうと、脳血流の不足が一気にきて脳が働くなり、多くの患者さんで脱力発作が生じるのです。

2.もやもや病ではどんな症状がでるのですか?

もやもや病ではないかと疑うときのポイント

 もやもや病を疑うにはまずは症状・病歴からです。

 子どもさんの場合、過呼吸により起こる「一過性脱力発作」と呼ばれる発作が特徴的です。例えば、泣いたり、熱い食べ物を食べるときに「フーフー」と息を吹きかけたり、歌を歌ったり、ハーモニカや笛を吹くなどの過呼吸で、数分間手足の力が抜けてしまいます。手の力が抜けると物を落としたり、足の力が抜けると座り込んでしまいます。

 このような症状は数分間で戻ってしまうため、病院に受診したときにはすでに症状がなくなっていることも多く、日頃からご家族、特にご両親が子どもさんの症状に気をつけて見ていく事が大切です。幼稚園や小学校に入学されたお子さんの場合は、学校の先生が異変に気付かれることもあります。

 その意味でも別項で書いていますが、病状日記をつけることはとても大切なのです。

 言葉で説明するのは簡単ですが、健常者だと思っている人が実際に症状を呈したとき、もやもや病を疑い、診断するのは容易ではありません。見た際に、異常に最も気付きにくい症状が、「一過性脱力発作」と「失神」です。

 両者とも脳の血流不足によって起こる病態ですが、軽いとわかりにくい症状の上に、脳循環が改善すると症状も消失しますので、なおさら診断が難しいのです。学校で典型的脱力発作を起こして手足が動かなくなり、救急車で運ばれたのに、病院に着いた時には手足の麻痺も無く、医者ですらもやもや病と、いや病気とすら診断できなかったいうこともあるのです。

A) 一過性脱力発作(TIA)

 一過性脱力発作とは、手足が麻痺しますが数十秒や数分後に改善する症状です。

 もやもや病で内頸動脈に著しい狭窄や閉塞が生じると、脳の局所の血流低下がまず起こります。そしてもやもや病の患者さんでは、過呼吸で脳血流が更に低下します。泣くなどして過呼吸の状態になると脳血流低下が限界を越え、そのため数分間手足の麻痺が生じるわけです。

 一過性脱力発作はもやもや病以外の病気でも起こる場合がありますが、泣いたときやピアニカを吹いたときに手足に力が入らないといった症状は、もやもや病の子どもさんの代表的症状といえます。子どもさんでこの症状が見られれば、まずもやもや病を疑います。しかし、代表的症状である一過性脱力発作ですら、小さな子どもさんで診断するのは困難です。目の前でしゃがみ込む幼子が、自分の意志でしゃがんでいるのか、両足の力が抜けたためしゃがんだのか見極めなければなりません。また、一瞬ふらついて歩いていたのにすぐに元に戻ったら、病的に異常なのかふざけていたのか区別がつきません。大人の方の場合でも、症状が軽い時は見逃されやすくなります。典型的一過性脱力発作の子どもさんの親御さんですら、症状が軽くあまりに頻発するため自分の症状が一過性脱力発作と気付かれなかった方もおられます。

 わかりにくい脱力発作として、
1)風呂場で歌った後、ふらふらし座り込む
2)自転車を早くこいだところ、手足が痺れる
3)たばこを吸っている時、握る指に力が入りにくい
といった方がおられ、検査したところもやもや病でした。これらはすべて呼吸と関係した一過性脱力発作の一種で、もやもや病だと疑ってみないとこの病気の症状とすら思えません。それ位、実際の現場で一過性脱力発作を診断するのは難しく、見逃されやすい症状です。

B) 失神

 脳の虚血により手足の脱力ではなく、意識が低下する(ぼーとなる)一過性発作があります。これが失神です。失神はもやもや病に特異的でなく、色々な原因で起こり、立ち上がろうとするときに起きる起立性低血圧や、腹圧と血圧が関与しているために放尿し始めた時に起こる排尿時失神などが有名ですが、この失神が主症状で発病されるもやもや病の方もおられます。失神も一過性の症状ですが見逃さず、もやもや病も疑いMRI & MRA検査を受けることが大切です。

 私が診た患者さんの中には、熱いうどんを食べる時、フーフーと吹く度におしっこを漏らされた子どもさんがおられます。これも、過呼吸したため脳血流が低下し、意識がもうろうとした失神状態となり、失禁されたわけですが、おしっこを漏らす子どもさんを見て、これが失神発作で起きており、重篤な病気だとは通常思いません。また、失神発作を長年繰り返した後、診断された方もおられます。20歳過ぎに準備体操で深呼吸した時に頭がボーとしたことでMRI & MRA検査を受け、もやもや病と診断されました。しかしよく聞くと、小学校の頃から歌った時に気分が悪くなったり、ボーとすることがあったとのことです。また、子どもさんへの手術の説明をしている時に、私の目の前で一瞬ふらっとされた親御さんがおられ、この方ももやもや病でした。一瞬ふらっとした位の軽い失神を見逃したり、もやもや病を疑わずにMRI & MRA検査しないと、診断は遅れてしまうわけです。

C) 脳出血

 大人の方の場合に見られる出血型は、「突然の頭痛」、「嘔吐」や「麻痺」、「意識障害」で発症します。脳出血の診断は頭部CT検査で可能です。日本ではCTの普及が進んでおり、多くの病院でCT検査を受けることができます。CTでは血管の外に出た血液は白く映ります。もやもや病では特に、「脳室」と呼ばれる脳の中で脳脊髄液をためておく部屋の中に出血する、「脳室内出血」を発症する方が多く、そのような出血を起こした場合にはもやもや病ではないかと疑います。そして時々、MRI(核磁気共鳴撮像法)で出血の原因となった動脈瘤が見つかることがあります。

【もやもや病によって起こった脳室内出血】

もやもや病…どんな検査が必要ですか

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