脳・神経機能センターの診療について(松島俊夫センター長による神経血管圧迫症候群・もやもや病に対する治療

もやもや病…もやもや病とは

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3.どんな検査が必要ですか?

 約20年前には、この病気は大変珍しい病気だと言われ、患者さんの数も多くありませんでした。当時、検査法として脳波検査と脳血管撮影しかなく、診断が困難だったからです。 脳波検査では、過呼吸負荷によるre-build up(リ・ビルドアップ現象、再出現)と呼ばれる現象を見て診断していましたが、確定は出来ず、最終的には脳血管撮影を行わざるを得ませんでした。診断を確定させるために必要な脳血管撮影は外来では出来ず、しかも合併症も報告されていました。その後、診断機器、MRI・MRA (核磁気共鳴影像法)の出現で、診断や経過観察法も大きく変わってきました。現在では、MRI & MRA検査で外来で簡単に診断できます。注射する必要がないので、子どもさんも比較的容易に検査できます。かつてもやもや病は、手足の麻痺や言語障害などの重篤な後遺症を出して初めて診断される病気でした。しかし今では、軽い一過性脱力発作や失神などの段階でMRI & MRA検査を受ければ、見つけることができる病気です。しかも、専門医師の管理の元で暮らせば重い後遺症を出さずに普通の生活が送れる病気です。どうぞ、これらの一過性の症状を見逃さずにMRI & MRA検査を受けて下さい。もやもや病患者さんのご家族の方も希望されればMRI & MRA検査を行っております。

A) MRI & MRA検査-外来で診断可能、テスラの問題-

 MRI & MRAは、造影の必要も無く、短時間でできますので、子どもさんでも検査可能です。そのお陰でこの病気の診断が容易となり、近年、一見、元気に暮らしておられる症状の無い患者さんや症状が軽い患者さんが多数見つかるようになりました。特定疾患の申請も、脳血管撮影の代わりに、MRI & MRAで申請できるようになりました。MRIは脳の形を描出し、脳梗塞を早期に描出出来ますし、MRAでは脳の血管の形を見ることが出来ます。厳密に言うと正確ではありませんが、ある程度は脳血管の大きさや形がわかり、もやもや血管も見ることが出来ます。しかし、ここで注意しなければならないことは、単にMRIと言っても車に色々な車種があるように、その機種により性能に大変な違いがあるということです。MRIは放射線ではなく、磁力を使って体の中の水分分布の違いから画像を撮影する器械です。ですから、MRIの器械は巨大な磁石と考えていただければよいかと思います。そのため、検査室に入る前には金属を持っていないか、心臓のペースメーカーを埋め込んでいないか、頭の中に動脈瘤のクリップが入っていないかなど、しつこいくらいに質問されます。巨大で強力な磁石の近くに金属が近寄れば、すさまじい力でその金属が引っ張られ、器械を壊してしまうからです。その磁力の強さを表す単位が「テスラ」です。通常、0.5テスラから1.5テスラの磁力を発生させるMRIが検査には用いられていますが、もやもや病の正確な診断には1.5テスラ以上の磁力を持ったMRIが必要です。また撮像法にも色々あり、水が黒く映る「T1強調像」、水が白く写る「T2強調像」、脳梗塞があれば白く映る「拡散強調像」が最も頻繁に用いられています。特に、脳梗塞を発症から数時間内の早い段階で診断しようとすると、拡散強調像を撮影しなければなりません。もやもや病の経過観察のためには、この検査を1年に1回は受けられた方がよいでしょう。そして、脳血管の狭窄の進行や新しい病巣、脳梗塞の有無を見てゆく必要があります。当院では、PHILIPS社製3.0テスラMRIを導入しており、より正確な画像診断が可能です。

【MRI:PHILIPS社製 アチーバ3.0テスラ】

【もやもや病のMRI画像 (下から見た像)  もやもや血管(矢印)がみえる。】

【もやもや病のMRA画像 (両側内頚動脈、右後頭動脈が閉塞している。)】
【1:下から見た像           2:左横から見た像】
【3:内頚動脈系 正面像  4:椎骨脳底動脈系 正面像】

B) CTスキャン

 血管の外に出た血液が白く描出されるので、脳出血の診断に適しています。しかし、CTスキャンでは造影剤の注射を行わないと脳血管の検査ができず、虚血型もやもや病をCTスキャンで診断することは困難です。大人で発症される方は、頭痛・吐き気・意識障害・片麻痺などで発症する脳出血型のことが多いので、この検査で脳出血がないかを確認する必要があります。しかし、初期の脳梗塞巣をこれで見ることは困難です。脳梗塞の早期診断には、MRI を行う必要があります。

【CTスキャン装置】

【もやもや病の脳室内出血のCTスキャン(左)、
脳梗塞急性期のCTスキャン(中央)と脳梗塞急性期のMRI拡散強調増(右)】

C) ヘリカルCT(3D-CTA:3次元CT血管撮影)

 造影剤の注射を行いながらCTスキャンの検査を行うことで、脳および頭皮の血管の走行を三次元的に検査することができます。子どもの患者さんには脳血管撮影が困難なこともあり、この検査でできる限り代用しております。得られた画像を3次元に再構成することで、下の画像のような脳内の血管の走行や、頭皮の血管の走行を知ることができ、どの血管をどこに手術でつなげばよいかを知ることができます。また、血管が細くなっている場合は、どの程度細くなっているかを知ることができます。また、術後の検査にも用いることが出来ます。 この検査のおかげで、脳血管撮影を減らし、その検査による合併症の後遺症を回避できるようになりました。

(右側)            (正面)             (左側)

【もやもや病の頭皮の血管】

【3DCT画像 バイパス術後、右浅側頭動脈(矢印)を頭蓋内へつないだ。】

【3DCT画像 脳底動脈瘤合併例】

D) 脳循環代謝検査(SPECT とPET)

 脳血管撮影やMRAは脳血管の形を見るものですが、SPECT (スペクト:Single Photon Emission Computed Tomography)やPET(ペット: Positron Emission computed Tomography)は、より症状と関係する脳循環代謝をみる検査です。脳循環即ち脳の血液のめぐり方をみることで、脳の中のどの部分に血流が不足しているのかを検討します。

【もやもや病のSPECT画像、安静時(左)と比べて過呼吸時(右)で左右差がはっきりしている】

E) 脳血管撮影

 大腿部または肘などの太い動脈にカテーテルと呼ばれる細い管(直径数mmほど)を挿入して、血管の中を通し、脳の近くまで進めて行きます。そこから脳の血管の中へ造影剤を直接注入し、レントゲン写真を撮影することで、脳血管の形、特に狭窄度合いを見る検査法です。MRI & MRAが登場する以前には、厚生省の特定疾患を申請する際に必須の検査でした。この検査で、両側内頸動脈終末部の狭窄や閉塞とその近くのタバコの煙のように見えるもやもや血管が存在することを確認し、もやもや病と診断したものです。しかし、カテーテルを挿入する際、動脈に管を刺すため、検査中はもちろん検査終了後も、大腿部を刺した場合には数時間は仰向けに寝たままでじっとしていなければならないので、少し苦痛を伴う検査です。しかも1000人に1人の割で脳梗塞などをおこす可能性があり、危険を伴う検査です。小さな子どもさんでは全身麻酔をかけて行わないと協力が得られず施行できません。

 現在では、高性能のMRI   MRAで、上記のようなもやもや病の所見を外来で得ることができ、厚生省の特定疾患の申請もMRI,MRAで可能です。当科では、出来る限りMRI & MRAですませ、脳血管撮影は行わないように努めています。

F) 脳波検査

 脳波検査は脳の神経細胞が出す電気の波を拾い、波の形や大きさや頻度やリズムを見る検査です。過呼吸時に出るゆるやかな波、いわゆる徐波が正常人では過呼吸を止めると消えるのに、もやもや病患者さんの多くでは、過呼吸を止めて30窶狽U0秒後にもう一度出現します。いわゆるリ・ビルドアップ現象が見られるわけです。しかし、MRI & MRAが出現してからこの検査は不要となり、現在ではてんかんを伴う場合にのみ用いられます。

 しかも一過性脱力発作をおこす状態を作るため、過呼吸、風車などをフーフーと吹かして検査していましたが、これらの行為は危険を伴うので、現在ではほとんど行っていません。

もやもや病…もやもや病の病型や病期とは

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