脳・神経機能センターの診療について(松島俊夫センター長による神経血管圧迫症候群・もやもや病に対する治療

もやもや病…もやもや病とは

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4.もやもや病の病型(発症の仕方)や病期(進み具合)とは?

もやもや病の病型(発症の仕方)

 もやもや病は脳の血管が徐々に詰まると共に、もやもや血管が側副血行路として発達してくる病気です。スピードも各個人によって違い、早い人は1~2年で、遅い人は10数年かかって詰ってゆきます。すべてのもやもや病の患者さんの症状や状態が均一なわけではありません。

特定疾患では
1. 出血型
2. てんかん型
3. 梗塞型
4. TIA型
5. 無症状型
6. その他(   )
の6つに分けられます。

1.出血型

 初回発作から出血を起こすもので、大人の方に多く、元気に暮らしていた人が突然激しい頭痛を訴え意識さえなくなります。多くの場合、側副血行路として発達してきたもやもや血管は弱く、これが破れてしまうことが原因で、「脳室内出血」を生じます。もやもや血管に血管のたんこぶである「脳動脈瘤」がみつかる場合もあります。

2.てんかん型

 ある日突然、手足を振るわせ意識消失を生じる「てんかん」で発症するものです。てんかんを起こす人の多くには、既に脳梗塞があります。また脳梗塞を起こした時にその症状として、てんかんを発症する場合もあります。

3.脳梗塞型

 一回も一過性脱力発作なしに最初から脳梗塞を生じるものです。最初の発作から片麻痺や言語障害などの後遺症を残します。この型では、二回目の発作も脳梗塞が多く、後遺症を残すので要注意です。

4.一過性脱力発作(TIA:Transient Ischemic Attack)型

 もやもや病の代表症状で、子供が泣いたときやピアニカを演奏したときに手足の力が抜けますが直ぐに回復するといった症状が典型的です。初期の頃は数分間で元に戻りますが、繰り返している間に後遺症を残す脳梗塞を生じます。すなわち脳梗塞の前触れの警告でもあるわけです。これが頻発するのが、一過性脱力発作(TIA)頻発型です。もやもや病では前から後ろへ向かって徐々に、ひどいときには10年以上かかってゆっくりと血管が閉塞して行きます。そのため、脳の配置と関係して、初期には力が抜けるといった発作が起きていた方が、進行していくと、力は抜けなくなったけれど、手足がしびれたようになってしまうという症状を起こすことがあり、それからさらに進行すれば、見え方がおかしいと感じるようになってこられます。

5. 無症状型

 全く症状なく、頭部の外傷の際の検査や、脳ドックなどで偶然発見された方のことです。しかし、よくよく病歴を聞いてみると、一過性脱力発作があり、気付いていなかったという方も多くいらっしゃいます。


 血管が詰まって生じる一過性脱力発作や脳梗塞で発症した人が長期経過の中で出血を生じ、出血型になることも稀にあります。出血を生じると生命さえ危ぶまれますし、血管が詰まり多発性脳梗塞を生じますと知能障害や片麻痺、言語障害などの後遺症を残します。また、診断が難しい症状として高次脳機能障害と呼ばれる知能障害・衣服を着ることが難しい・計算がうまくいかない・うまく字を書けないといった障害を残す方もおられ、気付かれないままとなっていることも多くあります。これらが生じないように薬物治療や外科治療を行うわけです。

 外科治療のバイパス術は、特に血管が詰まりかかっている一過性脱力発作や脳梗塞防止に効果があります。

もやもや病の病期(進み具合)

 もやもや病の命名をされた鈴木先生は、もやもや病を6つの病期に分けて解説しておられ、「鈴木の6期相分類」と呼ばれています。当時はMRI & MRAは普及していませんでしたので、脳血管撮影の所見からの分類です。

第1期:内頚動脈終末部の狭窄
第2期:内頚動脈終末部の狭窄にもやもや血管が見られる
第3期:もやもや血管が増勢し前大脳動脈、中大脳動脈群が脱落し始める
第4期:病変が後ろへ及び後大脳動脈群が脱落し始める
第5期:内頚動脈系主幹動脈がほとんど消失
第6期:外頚動脈および椎骨動脈系よりのみ血流保全


 第2期でもやもや血管が見られ始め、第3期で中大脳動脈群が脱落し始め、第4期で病変が後ろへ及び後大脳動脈群が脱落し始めます。もやもや病は見つかってからも徐々に進行を続ける「進行性疾患」です。みつかった時期も、それからの進行速度も患者さんにより違います。同じ患者さんの脳ですら、左と右で違いがあります。ですから、病型や病期をしっかりと把握して、脳梗塞を起こして後遺症を残さないように担当の医師とじっくり相談の上で、治療方針を決定していく必要があります。

 脳を栄養している内頸動脈が狭窄から閉塞へ進行すると、外頸動脈と呼ばれる頭皮や頭部の筋肉を栄養する血管が頭蓋骨を貫いて脳を栄養しようとします。この現象を応用し人工的に早めにこれを造ってやるのが、バイパス手術の「間接法」です。第4期になるとしばしば脳梗塞が生じるので、多くの場合「第3期」までに、遅くとも「第4期」までにはバイパス手術を受けた方が良いようです。 

5.病症症状日記をつけましょう!

 もやもや病の患者さんとご家族へは、まず「病症日記」を付けることをお勧めします。これは、症状(病状)、即ち病気である脳の状態を把握するためのものです。詳細な日記(病歴)があれば、CT、MRI、SPECT(脳循環)等の検査無しでもかなりのことを知ることができます。

 先日も左側の脳にバイパス手術を行った8歳の子どもさんの親御さんから、一過性脱力発作(TIA)が頻発し始めたと、ご心配の連絡を受けました。よくよく聞くと、発作は左の手足に起こっていました、脳は右脳が左手足を、左脳が右手足を動かす対側支配で体を動かしています。左側の手術が関与している右側の手足ではありません。そこで急ぎMRI & MRA検査を行い、手術をまだ行っていない右側の脳血管狭窄が更に進行したのを見付け、遅れずに右側にもバイパス手術を行うことができました。親御さんの詳細な病状観察が役立ったわけです。

 「病症日記」の重要性を理解してもらうためにも、一過性脱力発作と脳の病態(虚血の部位やその程度)の関係について、脳の機能や血管支配をも含めて改めてご説明致します。右の大脳半球が左の手足を支配し、左の大脳半球が右の手足を支配し、言語中枢が多くの人で左大脳半球に存在することはご存知と思います。脳の機能は、部位によって更に細かく分かれています。手足を動かす中枢は、外から見ると耳たぶの上の前頭葉後部、運動野と呼ばれるところにありますが、耳に近い外側部が手を動かし、頭のてっぺんの正中部が足を動かします。しかも、これらの脳は、酸素を供給し二酸化炭素を運び出す血液の供給が十分に来ないと機能しません。大脳半球を栄養する大きな血管は左右それぞれに3本あり、前方正中部へ血液を供給する「前大脳動脈」、側方中部への「中大脳動脈」、後部への「後大脳動脈」です。前大脳動脈と中大脳動脈は、内頸動脈から分かれます。この分かれ目が「内頚動脈終末部」です。手を動かす脳は運動野下部の外側部で中大脳動脈により、足を動かす脳は運動野上部の正中側で前大脳動脈により栄養されます。もやもや病で内頸動脈に著しい狭窄や閉塞が生じると、その分枝である前大脳動脈と中大脳動脈領域、特にそれらの「境界領域」にまず血流低下が起こります。泣くなどの負荷が掛かると更に血流が低下し、血流低下がひどい部分の大脳半球が一時期働かなくなり、そのため数分間手足の麻痺が生じるわけです。更に血管狭窄が進み、脳の一部分でも血流が最低限を割った時間が長くなると、脳神経細胞が死に、元に戻らない「脳梗塞」と呼ばれる状態になり、麻痺などの後遺症が永久に残ることになります。一過性脱力発作は、脳梗塞に陥る危険性がありますよとの「警告のサイン」ですので、用心しなければなりません。

 このように、詳細な病歴から細かな症状がわかれば、罹患した大脳半球の部位やその程度をかなり知ることができます。

 では、一体どんな内容を日記に書いておけばよいのでしょうか?

 皆様が普段書いていらっしゃるような日記とは違い、毎日記録をつける必要はありません。記録を付けるべき時とは、
1. 脱力発作が出現した時
2. 脱力発作が頻繁に起こり、病院を受診した時
3. 症状は無いものの、定期的な外来通院またはMRIや脳循環検査(SPECT)などの検査を行った時
4. 入院のうえ、検査・治療を行った時
などに記録を付けておくことをお勧めしています。

「1.脱力発作が出現したとき」に記載していただきたい内容は、
症状が出た日付・時刻(特に左右どちらか)、何分くらい持続していたのか、何をしているときに出たのか、病院は受診したのかといったことです。右手・右足など脱力が見られた部位

例えば、
○月△日□時頃に、風呂場で歌を歌ったら、右手に脱力発作があった。2分くらい続いたが、すぐに元に戻ったので病院には行かなかった。
といった内容になります。

 1回の発作の記載は、1~2行ほどですが、1ヶ月~2ヶ月に1回の定期外来を受診していただく際にまとめて見せていただくと、治療方針の参考にもなりますし、日常生活で気をつけることを指導させていただく際の参考にもなります。それに、数ヶ月、数年にわたって記録を付けておくと、ご自分でも、「去年より発作の回数がだんだん多くなっているようだ。」「先月は発作が多くて心配になって病院を受診したりしたが、今月は症状が少ない」など、定期的な外来を受診する以外に、どういうときに受診するのがよいのかを判断する基準にもなってきます。また、発作の誘因となったことが見つかることもあり、その行為をやめさせることができます。

「2.脱力発作が頻繁に起こり、病院を受診したとき」には、
上記の発作が出た時刻や持続時間などを記録していただいた上で、どこの病院(いつも通っている病院か、それとも近所の初めて行く病院か)、どのような検査(CTスキャン、MRIなど)、どのような説明を受けたのか、点滴など治療を受けたのかといった内容を記録しておくとよいでしょう。

例えば、
□月○日△時頃から、家で炊事をしていたら1時間おきに脱力発作が5回あった。最後の1回は1時間たっても完全には元に戻らなかった。これまでにこのようなことはなかったので、心配になってすぐに近所の「☆☆☆脳神経外科クリニック」を受診した。CTスキャンとMRIの検査を受けた。CTスキャンで出血はない、MRIでも脳梗塞は無いと説明を受けた。血管の太さは、普段検査を受けている「※※※大学」の検査と比べてみないと進行が急なのかはわからないと言われ、近日中に予約を取って、受診するようにアドバイスを受けた。点滴を1本受けたら脱力は消えた。
という内容になります。脱力発作だけのときより、書くことは少し多くなります。
このように、思わず病院を受診するような、頻繁かつ長く続く発作が出るようになってくると、血管の狭小化が進行して、脳循環代謝に変化が起こっている事態が予想されます。このような情報があれば、予定より早めにMRI & MRA検査を行ったり、脳血流代謝検査(SPECT)を行ったりと、経過観察を行うスケジュールを変更し、治療方針を検討して行きます。

「3.症状は無いものの、定期的な外来通院またはMRIや脳循環検査(SPECT)などの検査を行ったとき」には、
どのような検査を受けたのか(MRI & MRA、脳血流検査(SPECT)など)、どのような説明を受けたのか、次回検査の予定などを記録しておきましょう。

例えば、
☆月□日、○×先生の外来を受診した。MRI & MRAの検査を受けた。新しい脳梗塞巣や脳血管の太さに大きな変化が無いと説明を受けた。来週SPECTの検査をする予定になり、血流代謝に変化があれば手術を検討しては?と説明された。
といったような内容になるかと思います。

 最近では、MRI & MRAが発達、普及してきたことで、症状がまだ出てない段階でもやもや病がみつかる人もいます。現代は予防医学の時代ですので、症状が出る前にMRI & MRAで脳血管の僅かな狭窄をみつけ、病変の進行を予測し対応するのが理想的治療法です。

もやもや病…どんな治療法があるのでしょうか

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