音声・嚥下センターとは、耳鼻咽喉科領域の疾患の中でも特に発声や食べ物の飲み込みの異常、声門下狭窄や喉頭がんなどの喉頭疾患を中心とした音声障害・嚥下(飲み込み)障害を専門に扱う九州では唯一ともいえる診療センターです。
「口からものを食べる・飲み込む」「会話をする」などの行為は、人間の生活にとって欠かせないものです。しかし、年齢とともに飲み込む力・声を出す力が衰えてくるのも事実です。一方、若い人の中にも発声が困難であるにもかかわらず診断も治療も受けられず悩みを抱えている患者さんも少なくありません。
今や我が国における死因の第3位は「肺炎」であり、高齢者の死因ではトップとなっています。そのうちの約7割は、飲み込みの力の弱まりや誤嚥を生じて気管から肺に雑菌が侵入して感染する「嚥下性肺炎(誤嚥性肺炎)」に起因していると言われています。
当センターでは、特に飲み込みや発声などの異常や喉頭の様々な症状に対して適切な診断・治療を行っています。嚥下障害の中には、外科手術によって劇的に改善するケースも少なくありません。また、音声障害には、診断が極めて難しいものがあります。当センターでは、言語聴覚士とも連携して発声や飲み込みなど喉頭の症状の回復を図っています。このような症状でお困りの方は、ぜひご相談ください。
- 声がかれる
- 声が出しづらい
- 会話中、声がふるえる、声がつまる
- 飲み込みが悪い
- 飲み物でむせる
- のどの通りが悪い
- のどが痛い
- 味がしない
- 首のしこり など
- 嚥下障害(脳神経まひ、脳卒中後、頭頸部がん術後など)
- 声帯ポリープ
- 声帯結節
- 声帯まひ(反回神経まひ)
- ポリープ様声帯
- 喉頭がん
- けいれん性発声障害
- その他の機能性(心因性)発声障害
- 喉頭・気管狭窄 など
喉頭ストロボスコピー、フォノグラム、嚥下造影検査などを用いて、発声や嚥下の機能を多角的に評価し、声帯麻痺や声帯ポリープ、声帯結節などに対する手術や声門下狭窄、嚥下障害などに対する治療と言語聴覚士によるリハビリテーションを行います。
嚥下造影検査
ものを飲み込むときの様子を、X線を使って撮影します。ものが喉をスムーズに通っているか、また固いもの・柔らかいもので違いはないかなどを観察します。

喉頭ストロボスコピー
声を出すときに声帯がふるえている様子を見る検査です。声帯に特殊なストロボを小刻みにあてながらカメラで撮影し、声帯の振動状態を詳しく観察します。

言語聴覚士によるリハビリテーション
患者様の症状に応じてどのようなリハビリテーションを行うかを検討し、発声や嚥下の機能回復を図ります。

- 痙攣性発声障害
- 痙攣(けいれん)性発声障害とは、声を出そうとしても声帯が異常な動きをしてしまい、「声が出ない」「ふるえる」「つまる」などの症状があらわれて、うまく話せなくなってしまう難治性疾患です。比較的若い女性に多く発症します。声帯そのものには異常がないことが多く、耳鼻咽喉科で診察をうけても診断がつかないこともあります。
当院では、ボトックス注射に加え、チタンブリッジを用いた甲状軟骨形成術の治療を行っています。チタンブリッジを用いた甲状軟骨形成術とは、声帯が強く閉まらないように甲状軟骨(喉頭の軟骨)を縦に切開し、声帯と軟骨の付着部を軟骨ごと外側に広げて固定する手術術式で、半永久的な効果が期待できます。局所麻酔で行われ、手術中に患者様が発声しながら切開幅を調節することが可能で、適切な症状の改善が期待できます。手術時間は1~1時間半程度です。声帯が腫れることがあるため、手術後3日間くらいは声を出さない「沈黙療法」が必要となります。
音声・嚥下センターの梅﨑俊郎センター部長は、このチタンブリッジを用いた甲状軟骨形成術の実施医認定を既に取得しており、現在のところ、福岡地区では当センターのみでこの手術が可能です。 - 声門下狭窄
- 低体重出生による長期挿管や先天性疾患による喉頭・声門下の狭窄は、非常に難治性が高く、対応できる病院も多くありません。当センターでは医師の豊富な経験に基づき、小児の気道狭窄、喉頭狭窄に対する気道管理や気管形成術など狭窄そのものの治療に対応します。
- 喉頭がん
- 長引く声がれの症状がある場合は(特に喫煙者)、すでに喉頭がんを発症していることも少なくありません。当センターでは、がんが広がった声帯の一部と周囲の組織を切除する喉頭垂直切除術や喉頭亜全摘術を行っています。これらの手術は、声帯や喉頭の一部を残すことが可能なため声を失うことがありません。さらに、食べた物が気管に入ってしまう嚥下障害も防げます。ただし、これらの手術は、当センターを含め限られた施設でしか行われていません。
この他、当センターでは、放射線治療科と連携して治療を行っています。非常に精度の高い最新の放射線治療装置「リニアック」を用いて、病巣部のみにピンポイントで照射し治療が可能です。不要な範囲に照射される放射線を最小限に抑えられます。
重症化して音声を失う前に、適切な治療を受けることが重要です。
診療医 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 専門分野 | ||||||
午前 | 午後 | 午前 | 午後 | 午前 | 午後 | 午前 | 午後 | 午前 | 午後 | 午前 | 午後 | ||
梅﨑 俊郎 | 要予約(喉頭外来新患) | 予約再診(音声・嚥下外来) | 予約再診(気道外来) | 要予約(喉頭外来新患) | 音声外科 喉頭癌の診断と治療 上気道狭窄(小児含む) 嚥下障害の定量的評価と外科的治療 音声・嚥下機能を重視した喉頭がん治療 |
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松原 尚子 | ○ | 予約再診(音声・嚥下外来) | 交替制(新患・要予約) | ○ | ○ | 交替制(新患・要予約) | ○ | 耳鼻咽喉科全般 音声・嚥下 鼻科 |
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井口 貴史 | ○ | 予約再診(音声・嚥下外来) | 交替制(新患・要予約) | 交替制(新患・要予約) | ○ | 嚥下医学 耳科学 |
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鈴木 智陽 | ○ | 要予約 | ○ | 耳鼻咽喉科全般 | |||||||||
九大Dr. | ○ |
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【受付時間】 |
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梅﨑 俊郎
(うめざき としろう)
[音声・嚥下センター部長、国際医療福祉大学教授] |
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佐賀医科大学 | |
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九州大学耳鼻咽喉科 | |
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音声外科 喉頭癌の診断と治療 上気道狭窄(小児含む) 嚥下障害の定量的評価と外科的治療 音声・嚥下機能を重視した喉頭がん治療 |
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九州大学医学部臨床教授 九州大学耳鼻咽喉科非常勤講師 福岡大学臨床教授 前九州大学病院耳鼻咽喉・頭頸部外科診療准教授 日本耳鼻咽喉科学会認定 専門研修指導医・耳鼻咽喉科専門医・喉頭形成手術実施医 日本頭頸部外科学会認定 頭頸部がん専門医 日本嚥下医学会理事長 他 医学博士 Travel Award (American Thoracic Society International Conference 1997) Scientific Poster Awards-Silver Ribbon(AAO-HNSF(米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会),2015) |
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嚥下障害の中には手術によって劇的に改善するケースも少なくありません。また、音声障害においても極めて診断の難しいものもあります。飲み込みや発声など喉頭の症状でお悩みの方はぜひ一度ご相談ください。 |
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松原 尚子
(まつばら なおこ)
[耳鼻咽喉科副部長] |
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三重大学卒 | |
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九州大学耳鼻咽喉科 | |
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耳鼻咽喉科全般 音声・嚥下 鼻科 |
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前済生会福岡総合病院耳鼻咽喉科部長 元福岡記念病院 元福岡市民病院 元福岡市立こども病院 日本耳鼻咽喉科学会認定 専門研修指導医・耳鼻咽喉科専門医 日本気管食道科学会認定 気管食道科専門医 医学博士 |
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耳鼻咽喉科一般を担当しており、専門は、音声・嚥下です。 適切な診断と治療を心がけ日々努力しています。患者様一人ひとりに分かりやすい説明と丁寧な診療を心がけています。お気軽にご相談ください。 |
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井口 貴史
(いのぐち たかし)
[耳鼻咽喉科医長] |
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鹿児島大学卒 | |
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九州大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科 | |
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嚥下医学 耳科学 |
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前福岡記念病院耳鼻咽喉科部長 元九州大学耳鼻咽喉・頭頸部外科助教 元北九州市立医療センター耳鼻咽喉科部長 日本専門医機構認定 耳鼻咽喉科専門医 日本耳鼻咽喉科学会認定 耳鼻咽喉科専門研修指導医 日本嚥下医学会認定嚥下相談医 Global Postlaryngectomy Rehabilitation Academy コース修了 |
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専門である嚥下医学、耳科学領域を中心に、大学病院および基幹病院で診療をして参りました。今まで培ってきた知識や技術を日々の医療に還元していけるよう、努力していく所存です。 受診の手間や待ち時間などが苦になることがないような「満足度の高い」医療を提供すべく日々研鑽しております。 |
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鈴木 智陽 (すずき ともはる) |
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久留米大学卒 | |
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九州大学耳鼻咽喉科 | |
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耳鼻咽喉科全般 | |
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前福岡赤十字病院 元済生会福岡総合病院 |
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笑顔で、丁寧な医療を心がけています。 耳・鼻・のどでお困りでしたら、気軽に受診してください。 皆さまに安心できる医療を提供いたします。 |
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安達 一雄
(あだち かずお)
[非常勤 福岡国際医療福祉大学非常勤講師] |
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九州大学卒 | |
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九州大学耳鼻咽喉科 | |
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耳鼻咽喉科一般、音声・嚥下 | |
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前福岡山王病院耳鼻咽喉科部長 元九州大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科助教 元下関市立中央病院 元国立がんセンター 元筑豊労災病院 日本耳鼻咽喉科学会認定 耳鼻咽喉科専門医 |
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喉頭疾患を中心に治療を行っています。特に、音声障害および嚥下障害、外傷、腫瘍などの疾患を専門に治療を行っています。地域医療に貢献できるよう日々努力しています。 |