不妊症の検査
検査のながれ
検査には誰もが一通り受けておかなければならない一般検査と、一部の方が精密検査の目的で受ける特殊検査があります。
はじめに不妊原因を調べて、不妊の原因や女性の年齢、卵巣予備能をもとに治療計画を立てます。
一連の検査が終わるまでにはどんなに早くても1か月、通常2~3か月はかかります。
妊娠のチャンスは1か月に1回しかありませんから、不妊症の治療は少なくとも1年の通院が必要です。
不妊症の原因は女性側にある場合が1/3、男性側にある場合が1/3、両方にある場合が1/3で、夫婦ともに検査を受けることによって不妊症の治療を完全に行うことができます。男性不妊症の原因は、精液検査で調べますが、女性の検査においても男性の協力が非常に大切です。
不妊の検査・治療は必ず毎月続けなければならないわけではありません。
仕事や家庭の都合で来院が難しい場合は、医師に相談してください。都合に合わせてスケジュールを組むことができます。
なかなか妊娠しなくてもあきらめず、焦らずじっくり治療していきましょう。
不妊症検査のステップ
受診
特に避妊をせず、夫婦生活を1年続けても妊娠されない場合を不妊症と定義しています(日本産婦人科学会、WHO=世界保健機構)。
女性の 妊娠する力は、30代半ばからどんどん低下してしまいます。できるだけ早目の受診を!
検査と診断
まずは、不妊症の原因を検索する一般検査を行います。不妊症の原因や女性の年齢、卵巣予備能をもとに治療計画を立てます。必要に応じて腹腔鏡検査や子宮鏡検査などの特殊検査を行います。
不妊スクリーニング検査
正常月経周期の基礎体温と検査
- 下垂体ホルモン基礎値 LH-RHテスト・TRHテスト
- 子宮卵管造影検査HSG
- 超音波検査
- 性交後検査(フーナーテスト)
- 黄体機能検査
- クラミジア検査・その他の内分泌検査・AMH検査・精液検査
- 基礎体温
- 基礎体温の測定は、卵巣の働きを知るために最も重要です。
朝、目が覚めて体を動かす前に婦人体温計で測定し、基礎体温表に記入します。
検査の時期や治療の目安になりますので、受診の際には忘れずに持参してください。
各検査について
それぞれの検査は、月経周期に合わせて行います。
- 一般検査
- 特殊検査
一般検査
- 下垂体ホルモン基礎値LH-RHテスト・TRHテスト
- 月経初期(月経3~7日目)
- 卵胞の発育に大切なホルモンの基礎値を調べます。
- 脳下垂体から分泌される性腺刺激ホルモンを調べる血液検査です。
卵子の成長、排卵に関与する卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)、母乳分泌や排卵に関与するプロラクチンを調べます。
医師が必要と判断した場合は、負荷試験(LH-RHテスト・TRHテスト)を行います。採血を行い、次に脳下垂体を刺激する注射をして15分後と30分後に採血し、これらのホルモンの反応性を検査します。 - 子宮卵管造影検査HSG
- 月経終了後~排卵までの間
- 卵管の通りを調べます。
- 卵管が通じているか、子宮の中に筋腫やポリープができて変形していないか、卵管や子宮周囲に癒着がないかを調べるX線造影検査です。
- 性交後検査(フーナーテスト)
- 排卵日頃(通常月経12~14日目)
- 頚管粘液内の精子の数、運動性を調べます。
- 排卵日の1~2日前に超音波検査で卵胞の大きさを測定して排卵日を推定し、検査日を決めます。
受診当日の朝に性交渉を行い、頚管粘液内の精子の数、運動性を調べます。
精子の数が少ない場合、運動性が悪い場合、子宮頚管粘液の状態が不良の場合には、精子が子宮の中に入っていけない場合があり、不妊の原因になります。
また、免疫学的理由によることもあります。 - 黄体機能検査
- 高温相7日目頃(高温期5~9日目)
- 着床に必要なホルモンが出ているかを調べます。
- 卵巣から分泌される女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の量を調べる血液検査です。
- クラミジア検査
- 随時
- クラミジアに感染していないかを調べます。
- クラミジアという細菌の仲間が子宮や卵管に存在すると、炎症を起こして不妊症の原因になります。
血液検査または、子宮頚管粘膜の培養検査で調べます。 - その他の内分泌検査
- 随時
- 甲状腺異常や糖尿病を調べます。
- 甲状腺ホルモンの異常や糖尿病は不妊に大きく関与することがあります。
血液検査で、TSH・フリーT4(甲状腺)、空腹時血糖・HbA1c(糖尿病)などを測定します。 - AMH検査
- 随時
- 卵子の在庫を調べる検査です。
- AMH(アンチミューラリアンホルモン)というホルモンを測定すると卵巣予備能(卵の残り具合)をある程度、予測することができます。一般には、卵巣年齢とも言われています。
年齢の高い方や体外受精を行う方に、おすすめしています。
- 精液検査
- 随時
- 精液の量と、精液内の精子の状態を調べる検査です。
- 不妊症の原因は、女性、男性、または両方にある場合などさまざまです。男性不妊症の原因は、精液検査で精液量、精子数、運動率、正常形態率を調べます。
すべてのカップルに行うことが望ましい検査です。 - 超音波検査
- 排卵日前後または随時
- 卵巣や子宮に異常がないかを調べます。
この他、卵胞の数や発育の程度を確認したり、子宮内膜の厚さや構造を観察したりします。 - 超音波プローブを腟の中に入れて検査する経腟法で、卵胞の大きさを測定して排卵日を予測します。
排尿後の膀胱に尿が溜まっていない状態が検査に適しています。
特殊検査
- 腹腔鏡検査
- 下腹部を0.5~1.5cm程度、2~3か所切開して、胃カメラのような腹腔鏡をお腹の中に入れて、子宮、卵管、卵巣および骨盤内の状態を観察する検査です。1週間の入院が必要です。卵管や卵巣の周囲の癒着や子宮内膜症などの異常が見つかった場合は、同時に治療も行います。
- 対象
- 卵管や卵巣の周囲に癒着が疑われる場合
- 卵管がつまりかけている場合
- 子宮内膜症が疑われる場合
- 一般検査では不妊症の原因が見つからない場合
- 一般検査では見つけることができない異常を見つけて、最も適切な治療法を決めることができます。
4~5年以上の長期不妊症の方は、一般検査に引き続いて行うことが望ましい検査です。 - 子宮鏡検査
- 腟を通して胃カメラのような子宮鏡を子宮の中に入れて、子宮の内部を観察します。
入院の必要はなく、外来で行います。子宮内腔のポリープや子宮筋腫などの異常が見つかった場合は、後日、入院して子宮鏡下手術を行います。3~4日の入院が必要です。 - 対象
- 子宮卵管造影検査や超音波検査で子宮内腔に異常が見つかった場合
- 子宮の内腔に筋腫やポリープができている場合
- 子宮の内腔が癒着している場合