治療のながれ

不妊症の原因はさまざまです。女性、男性、または両方に原因がある場合があります。不妊症の治療は、一般検査で原因を探りながら、タイミング法などの治療を並行して開始します。一般検査の結果によっては、腹腔鏡検査や子宮鏡検査などの特殊検査に進みます。

晩婚化によって、治療を受けられる方の高齢化が進んでいますが、30代後半や40歳以上になると卵子数が減少して、卵子の質も低下します。
また染色体異常の卵子も増加するため、妊娠しにくくなるうえ、流産の可能性も高まりますので、妊娠しやすい時期に、より妊娠率の高い治療にステップアップすることをおすすめしています。

卵巣内の卵子の数(在庫)の指標となるAMH(アンチミューラリアンホルモン)の検査を行い、AMHの値と不妊原因、年齢をもとに治療回数を患者様と相談して決めます。

治療のステップ

タイミング法

タイミング法とは、「最も妊娠しやすいタイミングにあわせて性交渉を行う」方法です。
スクリーニング検査の結果をもとに排卵日を予測し、効果的な性交渉のタイミングを医師がアドバイスします。タイミング法を6か月続けても妊娠しない場合は、次のステップに進みます。

薬物治療

ホルモン環境を整える薬物治療

排卵障害や黄体機能不全、高プロラクチン血症など、検査結果により必要な薬物治療を行います。

人工授精(AIH)

人工授精とは、一般不妊症治療の一つで、「精子を人工的に子宮腔内に注入する」方法です。
排卵日に合わせて排卵直前から排卵直後の時期に行います。性交後検査(フーナーテスト)の結果が良くない場合やタイミング療法の次のステップで行う治療です。

人工授精を4~6周期行っても妊娠しない場合や女性の年齢が高い場合は、体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)を行います。

基本的な治療の流れ
(1)人工授精を行う日時を決定する

排卵日または排卵前日に合わせて、人工授精を行う日時を決めます。

(2)採精

自宅または当センターで採精します。当センター内で採精する場合は、予約が必要です。
当センター受付にお申し出ください。

当センターでは、精子の状態をより良くするため、また子宮収縮やそれに伴う疼痛防止のためにすべて良好精子洗浄濃縮法(P-AIH)で人工授精を行います。精子の洗浄・濃縮に約1時間程度かかります。

(3)人工授精(精子を子宮腔内に注入)

柔らかいチューブを使って、精子を子宮腔内に注入します。治療後は、しばらくの間、内診台上で安静にします。
感染防止のため2日間は抗生剤を服用します。

(4)妊娠判定

人工授精後、12~14日目に妊娠反応検査を行います。

対象
  • 精子の数が少ない(乏精子症)、精子の運動性が低い(精子無力症)などの原因がある場合
  • 精子-頸管粘液不適合で性交後検査(フーナーテスト)を繰り返しても精子の数や動きが良くない場合
  • 頸管粘液減少症でホルモン治療を行っても改善しない場合
  • 性交障害がある場合(セックスレスを含む)
  • 原因不明の不妊症でタイミング法を半年以上行っても妊娠しない場合など

高度生殖補助医療(ART)

Ⅳ-A体外受精(IVF)

体外受精・胚移植(IVF-ET)は、「精子と卵子を採取し、体外で受精させて受精卵を子宮に戻す」方法です。

基本的な治療の流れ
(1)排卵誘発(排卵誘発剤を投与して卵胞を育てる)

状態の良い卵子を子宮に戻して妊娠する可能性を高めるためには、できるだけ多くの卵子を採取する必要があります。
このため正常な排卵がある人でも排卵誘発剤(FSH、HMG製剤)を注射します。妊娠の確率を上げるために必要な最初のステップです。

排卵誘発剤(FSH、HMG製剤)の注射は、月経開始3日目頃から通常7~14日間、毎日行います。
(注射の量、回数は個人差があります)

注射開始後6~8日目から、経腟超音波で卵子の発育状態を2~4日毎に検査します。
卵子が十分に成長したら、卵子の成熟を促すHCG(胎盤性性腺刺激ホルモン)を注射します。
このHCG注射は、採卵時間の都合上、採卵日の前々日の午後11時以降に行う必要があります。

排卵誘発

排卵を誘発するには、いくつかの種類があります。卵巣の状態や治療経過によって決定します。

ショート法:採卵周期の月経1日目からGnRHアゴニスト(点鼻薬:ナサニール等)を使用し、排卵時期をコントロールしやすくします。月経3日目頃から注射で排卵誘発を開始します。

ロング法:採卵周期の前の周期の高温相からGnRHアゴニスト(点鼻薬:ナサニール等)を使用します。
月経3日目頃から注射で排卵誘発を開始します。

アンタゴニスト:排卵誘発剤によって十分に育ってきた卵胞の早期排卵を抑制します。卵胞経がある程度(約14mm)成長したところでGnRHアンタゴニストを使用します。

低刺激法:自然周期で経過を見ながら、作用の穏やかな飲み薬や注射で卵胞を育てます。

HCG注射

HCGは黄体化ホルモン(LH)と同様の作用を持つ薬剤で、成熟した卵胞に作用して排卵を促します。
注射または、状況によってはスプレーを使用します。投与後おおよそ34?36時間後に排卵が起こります。

(2)採精

卵子を採取する日の午前中に精液を採取(採精)します。採精の日程は、卵子の成長の程度によって決まりますので、2日前にしか分かりません。
自宅または当センターで採精します。当センター以外で採精する場合は、採取後1~2時間以内に病院にお持ちください。
当センター内で採精する場合は、予約が必要です。当センター受付にお申し出ください。

(3)採卵

HCG注射の33~36時間後(翌々日の午前9~11時)に卵子を採取(採卵)します。
採卵の順番によって来院時間が異なります。

経腟超音波を確認しながら、卵巣に針を刺して卵子を採取します。麻酔を使用するため採卵中の痛みはありません。
採卵日は月経の開始日、卵子の発育状態によって決定しますので2~3日前にしか分かりません。このため、治療前に採卵日を指定することはできません。ただし、前周期にピルを使ったり、点鼻薬(ナサニール)を月経7日前から使ったりすること(ロング法)で、ある程度の調整は可能です。

採卵日は、お腹の中で出血が起こる可能性があるため2時間程度、休憩が必要です。
麻酔を使用して採卵しますので、ご自身の運転によるお車での来院はお控えください。

(4)受精・培養

採卵当日に卵子と精子を体外で受精させます。
受精卵は、移植に適した状態になるまで1~5日間(通常2~3日間)培養します。

体外受精を2回実施しても受精しない場合は、精子の受精能力に問題がある可能性が考えられますので、顕微授精を考慮します。

(5-1)子宮内への胚移植

受精卵(胚)を子宮に戻します。
柔らかいチューブを使って、受精卵を腟から子宮内に戻します。

胚移植は通常、採卵後2~3日目の午後に行いますが、受精卵の数、状態によっては採卵後5日目(胚盤胞移植)に移植する場合もあります。

(5-2)胚の凍結保存

一度、採卵を行うと複数個の卵子が得られます。このうち受精した良好な胚を移植しますが、余った胚を余剰胚として凍結保存しておくことができます。妊娠が成立しなかった場合でも、別の周期に胚を融解して再度移植することが可能です。この方法によって、排卵誘発や採卵に伴う身体的・経済的負担を軽減できます。
(凍結費用・保管費用などが必要です)

(6)胚移植後のホルモン補充

子宮内の環境を良くして妊娠しやすいように胚移植後約10日間にわたって女性ホルモンの補充を行います。

方法:
・黄体ホルモン連日内服
・黄体ホルモン腟錠連日投与
・黄体ホルモン連日注射
・HCG隔日注射 など
一人ひとりにあった方法を選択します。

(7)妊娠判定

胚移植後12~14日目に尿検査で妊娠しているかどうかを確認します。

対象
  • 卵管が閉塞している場合
  • 卵管周囲に癒着があり受精卵の子宮への移動に障害がある場合(卵管因子不妊)
  • 精子の数が少ない(乏精子症)、精子の運動性が低い(精子無力症)などの原因がある場合(男性因子不妊)
  • 子宮内膜症
  • 免疫性不妊症
  • 原因不明の不妊症 など
最低3回、可能であれば6回は治療を行うことをおすすめします。希望があれば何回でも治療を行いますが、7回目以降は、妊娠する可能性が非常に低くなることを予めご了承ください。

Ⅳ-B顕微授精(ICSI)

顕微授精(ICSI)も、「体外で得られた受精卵を子宮に戻す」という点では体外受精と同じです。
精子と卵子を培養液に入れて自然に受精するのを待つ体外受精に対して、顕微授精は、「顕微鏡と細い針状のガラス管を用いて卵子と精子を人工的に授精させる方法」です。

人工授精は治療自体が1日程度で終わるのに対して、体外受精・顕微授精は排卵を促す注射を打ったり、採卵日の調整をしたりするために数日間通院する必要があります。
何らかの受精障害があり、培養液の中で自然に受精するのが難しい場合は、顕微授精を行うことになります。

基本的な治療の流れ
(1)排卵誘発(排卵誘発剤を投与して卵胞を育てる)

状態の良い卵子を子宮に戻して妊娠する可能性を高めるためには、できるだけ多くの卵子を採取する必要があります。
このため正常な排卵がある人でも排卵誘発剤(FSH、HMG製剤)を注射します。
妊娠の確率を上げるために必要な最初のステップです。

排卵誘発剤(FSH、HMG製剤)の注射は、月経開始3日目頃から通常7~14日間、毎日行います。
(注射の量、回数は個人差があります)

注射開始後6~8日目から、経腟超音波で卵子の発育状態を2~4日毎に検査します。
卵子が十分に成長したら、卵子の成熟を促すHCG(胎盤性性腺刺激ホルモン)を注射します。
このHCG注射は、採卵時間の都合上、採卵日の前々日の午後11時以降に行う必要があります。

排卵誘発

排卵を誘発するには、いくつかの種類があります。卵巣の状態や治療経過によって決定します。

ショート法:採卵周期の月経1日目からGnRHアゴニスト(点鼻薬:ナサニール等)を使用し、排卵時期をコントロールしやすくします。月経3日目頃から注射で排卵誘発を開始します。

ロング法:採卵周期の前の周期の高温相からGnRHアゴニスト(点鼻薬:ナサニール等)を使用します。
月経3日目頃から注射で排卵誘発を開始します。

アンタゴニスト:排卵誘発剤によって十分に育ってきた卵胞の早期排卵を抑制します。
卵胞経がある程度(約14mm)成長したところでGnRHアンタゴニストを使用します。

低刺激法:自然周期で経過を見ながら、作用の穏やかな飲み薬や注射で卵胞を育てます。

HCG注射

HCGは黄体化ホルモン(LH)と同様の作用を持つ薬剤で、成熟した卵胞に作用して排卵を促します。
注射または、状況によってはスプレーを使用します。投与後おおよそ34?36時間後に排卵が起こります。

(2)採精

卵子を採取する日の午前中に精液を採取(採精)します。採精の日程は、卵子の成長の程度によって決まりますので、2日前にしか分かりません。
自宅または当センターで採精します。当センター以外で採精する場合は、採取後1~2時間以内に病院にお持ちください。当センター内で採精する場合は、予約が必要です。当センター受付にお申し出ください。

(3)採卵

HCG注射の33~36時間後(翌々日の午前9~11時)に卵子を採取(採卵)します。
採卵の順番によって来院時間が異なります。

経腟超音波を確認しながら、卵巣に針を刺して卵子を採取します。麻酔を使用するため採卵中の痛みはありません。
採卵日は月経の開始日、卵子の発育状態によって決定しますので2~3日前にしか分かりません。
このため、治療前に採卵日を指定することはできません。ただし、前周期にピルを使ったり、点鼻薬(ナサニール)を月経7日前から使ったりすること(ロング法)で、ある程度の調整は可能です。

採卵日は、お腹の中で出血が起こる可能性があるため2時間程度、休憩が必要です。
麻酔を使用して採卵しますので、ご自身の運転によるお車での来院はお控えください。

(4)受精

採卵後、培養した卵子を顕微鏡下で、細いガラス管を用いて運動性の良い精子を卵子に注入し受精させます。

(5)受精の確認&培養

採卵の次の日に受精しているかを確認します。受精した卵は、分割卵へと発育します。
さらに培養をすすめ胚盤胞(桑実胚)へと育てることもあります。

※インキュベーターと呼ばれる温度とガス濃度をコントロールし、体内と似た環境を作ることができる機械で培養します。

(6-1)子宮内への胚移植(ET)

採卵から2~3日目に、培養した分割卵(4細胞期胚、8細胞期胚)を細い管で子宮内に戻します。
これを胚移植といいます。
受精卵の数、状態によっては、採卵後5~6日目に胚盤胞で移植する場合もあります。

(6-2)胚の凍結保存

一度、採卵を行うと複数個の卵子が得られます。
このうち受精した良好な胚を移植しますが、余った胚を余剰胚として凍結保存しておくことができます。
妊娠が成立しなかった場合でも、別の周期に胚を融解して再度移植することが可能です。

この方法によって、排卵誘発や採卵に伴う身体的・経済的負担を軽減できます。(凍結費用・保管費用などが必要です)

(7)妊娠判定

胚移植後12~14日目に尿検査で妊娠しているかどうかを確認します。

対象
  • 重症の男性不妊の場合
  • 受精障害がある場合(体外受精では受精しない)
  • ※他院で治療を受けられていた方は、途中のステップから始めます。
  • ※卵管因子・抗精子抗体(陽性例)や男性因子のケースでは、流れが異なります。

移植をサポートする技術

着床率を高める
孵化促進法(AHA)

胚盤胞まで発育した受精卵が着床の際に胚を取り囲む透明帯という殻を破って外に出ることを孵化(ふか)と言います。
良い受精卵であっても、この孵化がうまくできなかった場合は着床することができません。
孵化促進法(AHA)は、移植する胚や胚盤胞の透明帯にスリットを入れて孵化を助ける技術です。

対象
  • 40歳以上の方
  • 他院で不妊症治療を行ったことがある方
  • 胚移植を2回行ったにもかかわらず妊娠しない方
  • 凍結胚移植を行う方

子宮内膜の環境改善を図る
PFC-FD療法

PFC-FD(血小板由来因子濃縮物フリーズドライ)療法とは、患者様の血液から「成長因子」を抽出して、濃縮、凍結乾燥したものを目的部位に投与して、体内の組織の修復と治癒を促す治療法です。整形外科や皮膚科など、さまざまな領域で行われています。

不妊症治療では、胚移植前の子宮内にPFC-FD溶液を注入して、着床環境の改善を図ります。何らかの原因で子宮内膜が薄く、薬物療法でも十分な厚さにならない方や、胚を複数回移植しても妊娠に至らない方の着床を助けることが期待されています。

メリット
  • ご自身の血液からPFC-FDを作成するので、アレルギー反応や副作用などのリスクが低い
  • フリーズドライ加工をするので約半年間の保管が可能で、周期などのタイミングが重要なART療法とも併用しやすい
検査方法
PFC-FD療法は、わずか2STEPで完了
  • 採血(49ml)
  • 胚移植前に子宮腔内にPFC-FD溶液を1~2回注入

胚を効果的に移植し、妊娠率を向上させる
EndomeTRIO(エンドメトリオ検査)

EndomeTRIO検査とは、胚移植の最適なタイミング、子宮内膜の細菌の割合、子宮内膜炎かどうかを調べる検査です。 検査は、子宮内に細い管を挿入し、子宮内膜の一部を採取して行います。3つの検査を1回の検体採取で行うことができます。

子宮内膜は、肺が着床し赤ちゃんが成長していく場所です。EndomeTRIO検査は、体外受精や顕微授精で健康な胚を移植しても妊娠しない場合などに、子宮内膜の状態を調べるために行う検査です。

それぞれの検査
  • ERA(子宮内膜着床能検査):着床率が最も高まるタイミングを調べるための検査です。 検査結果を基に、移植の時期をずらしたり、黄体ホルモンの開始日をずらしたりして、最適な時期に胚移植を行います。
  • EMMA(子宮内膜マイクロバイオーム検査):子宮内膜の細菌の割合を調べる検査です。 子宮内膜の健康な菌のレベルが低い場合は、妊娠の確率が低くなる可能性があります。細菌のバランスが悪い場合は、抗生剤を処方します。
  • ALICE(感染性慢性子宮内膜炎検査):慢性子宮内膜炎を起こしているかを調べる検査です。 子宮内膜炎は、着床障害を引き起こす可能性があります。原因菌が検出された場合は、内膜炎の原因となっている細菌を特定し、複数のお薬の中から適切な抗生剤で治療します。

高い着床率が期待できる
胚盤胞培養

受精卵を胚盤胞まで成長させて移植する方法です。
胚盤胞まで発育した良好な胚を移植するため、着床率が高いのが特徴です。

受精卵は、2分割→4分割→8分割と分裂を続け、約5日目には「胚盤胞」と呼ばれる着床前の状態になります。
分割胚の状態で採卵後2~3日目に移植を行うのが「初期分割胚移植」、胚盤胞まで培養して5~6日目に移植を行うのが「胚盤胞移植」です。

メリット
  • 良好な胚の見極めが可能になり、着床率が高くなる。
  • 移植数を少なく抑えることができるため、多胎妊娠の防止につながる。


受付時間

受付時間
午前中(9:00~11:00)

初診の方

092-832-1226(予約専用)

※電話受付時間/9:00~17:00(月~土曜 ※祝日除く)
※お電話で、「リプロダクションセンターの初診の予約です」とお伝えください。
※初診の方は、婦人科をご受診いただきます。

再診の方

092-832-1226(予約専用)

※電話受付時間/13:00~17:00(月~土曜 ※祝日除く)
※お電話で、「リプロダクションセンターの予約です」とお伝えください。
※2回目以降のご受診は、当センターをご受診いただきます。

所在地

〒814-0001
福岡市早良区百道浜3丁目6番45号